お金など平たいものを送る時は風呂敷で平包みをしますが、
結婚式や誕生などのお祝い事の場合は、左からたたみ始める
右包みにします。
それ以外のお葬式といった法事を主とする際は、
上下左右の順番が異なる左包みにするのがマナーです。
この包み方は長い歴史を持つ日本の伝統で、始まりは養老3年、
西暦でいうと719年の奈良時代です。
時の女性天皇である元正天皇によって発布された法令で定められました。
それは風呂敷に関する法令というよりは、当時の日本で
生きていた人全体の服装を統一させるというものでした。
それまで人々の服装は自由で、どのような形でも許されていました。
しかし左袵、いわゆる左前は、位が高い人のものであるという
考えが生まれ、そうでない庶民は右袵、つまり右前に
統一するように定められたわけです。
これは中国を模倣したものと考えられ、遣唐使によって
日本に伝えられました。
このことから、当時の日本から見ると法整備や政治など、
中国の高い水準が伺えます。
そしてそうなると、人々にとって日常的となるのはもちろん
右前の服装で、これは風呂敷で言うと右包みです。
そして非日常となるのは左前の服装と左包みです。
当時から人は、特に生と死の間に強い境界線を持っていました。
死は生にあらず日常でないため、違いを表すために亡くなった人の
服装を左前にするようになりました。
お祝い事も非日常ではありますが、生と死に比べると
あくまでも日常の延長線上という考え方になります。
そして風呂敷も同じように、左包みが死に関係する際に
用いられることになりました。
また人は亡くなると位が高くなるため、より上位の
左前にするという説も存在します。
風呂敷の包み方に影響する法令が発布されてから、
2019年でちょうど1300年が経過したことになります。
マナーとして何気なくおこなっている作法にも
このように長い伝統と歴史があります。
その意味を考えながら包むと、それまでとは違ったように
見えるのではないでしょうか。